フランスの中世の町Saint Jean Pied de Portの城門を出ると直ぐにピレネー山地への登りが始まる。周囲の樹林は濃い霧に閉ざされた中、山道は左右に大きく蛇行して進む。14キロの荷物で肩がきしむが、一歩一歩踏みしめて登る。

森を抜けると、石や岩が多い斜面に疎らな草が生えてヒースが咲いている。仏西国境には標識すらもない。周りの様子は見えぬが、牛の首につけた鈴が霧を透して聞こえるので放牧地と知れる。谷は深く樹木の梢のみが霧から顔を出している。

「カウベルの 斜面の 右は (にれ)の谷」

 

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