「遍路道の花」
(1)シオン(紫苑)は、いわゆる紫苑色とよばれる紫がかった青色の花を付けて、人の背丈ほどに咲くキク科の植物。日本やアジア東北部に自生。花言葉は「君を忘れず」だそうだ。同じような色で丈の低いヒメジオンというキク科の花があるが、これは俗名で正しくはヒメジョオン(姫女苑)というアメリカ原産の帰化植物。6番・安楽寺の山号は「温泉山」で、宿坊には大きな浴場があり、一番から歩いた遍路にとって最初の宿となるケースが多い。

(2)キンモクセイ(金木犀)は元来9月下旬から10月上旬に咲く木の花だが、今年は秋になって温度が下がらず、徳島では10月中旬を過ぎても芳香を放っていた。4番・大日寺への途中では野中の牛舎の異臭と花の香りが混じり合って妙な匂いが漂っていた。室戸岬を廻って高知県に入った下旬になっても、27番・神峰寺(こうのみねじ)の山頂では仁王門の横の高い金木犀が辺り一面に濃厚なアロマを発散していた。

(3)コスモスは遍路道沿いのあちこちで見られた。特に41番・龍光寺の周辺ではコスモスでの町興しを狙っているのか、満開のコスモス畑では折から「コスモス祭り」との幟が立って人だかりがしていたし、次の佛木寺(ぶつもくじ)に掛けては、道路沿いにコスモスの花壇が続いていた。コスモスとは「秩序」を意味するギリシャ語だそうであり、空の星にも似た整然とした花弁をつけるその花は可憐だが、そのピンク色は極めて西洋的な感じがして、日本の伝統を代表する遍路の寺の古色蒼然たる雰囲気にそぐわないような気がして、抵抗感を持ったのは私の偏見だろうか。



