「遍路道の鳥」

 自然を豊かに残している四国では、いろいろな野鳥の姿が見られ、折に触れて私の疲れを癒してくれた。

 (その1イソヒヨドリ

 22番平等寺を打ち終えると、遍路道は海岸線に降りて行く。1017日夕刻、久しぶりに太平洋を見て寛いだ気分で、由岐の浜(ゆきのはま)の集落に入る。この辺は急傾斜の山が海岸線に迫り、沖には岩礁が散らばっている景勝の地で、波静かなビーチは夏は海水浴で賑うが、海亀の産卵場所でもあるらしい。水際を歩くと岩場の松影から、少しかすれた口笛のような声で鳴いている鳥の声がする。よく見ると、背中が青で胸がレンガ色、雀より大きい。由岐町に入る県道の観光看板に、この辺の名物として描かれていたイソヒヨドリ(磯鵯―blue rock thrush)らしい。小笠原や沖縄などの南日本から東南アジアの海岸線の岩場に棲む留鳥で、高知県の海岸でもよく見かけた。


(その2アオサギ

四国の河川や水田の上を、全体に青灰色で頭頂と首筋が黒く、翼を広げると後ろ半分も黒い大型の鷺が飛んでいるのを見掛ける。高知県西部の黒潮町、伊与木川が佐賀港に流れ込む河口に近く、中州の葦の茂みを挟んで、青鷺と白い中鷺が相手を横目で睨みながら立っていた。餌場を巡っての鞘当の場面のようだが、あたかも剣豪同士が間合いを詰めて相手の呼吸を測っているようだった。


(その3カルガモ

四万十の水系、蠣瀬(かきせ)川が河口近くで山裾を大きく湾曲して流れている。満月が出て、水面に月影が映る辺り、餌を漁って泳ぐカルガモが水面下に頭を入れると、あたかも月に潜るように見えた。


(その4ヤイロチョウ

高知県の観光案内の看板には色鮮やかな小鳥が図案化されて描かれている。県の鳥に指定されているヤイロチョウ(八色鳥―fairy pitta)というスズメ目の小鳥だ。中国南部から東南アジアを繁殖地として、日本南部には夏飛来する小型で、色鮮やかな渡り鳥。これまでお目に掛かったことのない珍しい鳥なので実物を見たいと思ったが、10月末なので南方に帰ってしまい見られないだろうと諦めていた処、思いがけず遭遇することが出来た。

1028日、峰ノ上峠から急坂を降った所の棚田の横で、岩に腰を掛け、靴を脱いで、下りで痛んだ足指の絆創膏を直していると、後ろの柿の木から小さな鳥が2羽地面に降りて嘴で虫を探している様子。頭の赤と黄色、背中の緑色と金属光沢のある青、こちらを向いた腹部には鮮やかな朱色の斑点がある。正しく八色鳥だ。地面を飛び跳ねていたが、10数秒の後には一羽が柿の木を越えて竹薮の上に飛び去ると、もう一羽もその後を追って見えなくなった。短いが幸運な邂逅だった。

 

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