「遍路の体調管理」

 私の遍路への動機は、自分と向き合うことだ、と初めに書いた。この場合、向き合うのは精神的な自分だけでなく、肉体的な自分に向き合うのも大切なことだ。一日30キロ、しかも晴雨を問わず連日の歩行は、古希の老人には大事業である。無事に完遂するには、体調を充分管理しなければならないと出発前に強く認識していた。

 体調といっても大袈裟なことではなく、先ず食事であり睡眠であり便通である。民宿の食事は栄養バランスも良く問題はない。歩いた後の食欲に任せて食べ過ぎないよう、又アルコールを摂り過ぎないように、老人の胃腸には注意が必要だ。疲れているのでよく眠れたが、夜中の34時に目が覚めてしまう。睡眠時間としては充分なので気にせず、日誌の整理や絵手紙作成などに活用した。問題は便通である。朝出発前に済ませておかねば、山中の遍路道を行く場合はオチオチ出来ない。しかし民宿では、未だに伝統的な和式が多く、出るべき物も萎縮してしまう。そんな場合は途中で多少の迂回でもコンビにを探して済ませるしかない。この点では女性遍路の苦労は思うに余りある。四国の遍路道ではもっと清潔なトイレを設置しなければ、世界遺産レヴェルに達しないのではないだろうか。

 今回私が悩まされたのは、足の肉刺だ。難路で肉刺が出来るのは、鍛錬の度合いと体質の問題であろう。私は、途中で外科医を訪ねて処置を受けたが、化膿防止にはなっても、遍路を続けている限り根本的な治癒は無理だといわれた。その意味では、予め靴のサイズや、毎日の歩行距離を適正にして、肉刺の発生を予防するしかない。

 風邪や食中毒、転倒による怪我、などについては、細心の注意を怠らなかったことと、気配を感じた時点で常備薬を早めに服用したので、大した問題もなく回避することが出来た。

 こうして、70キロの体重が65キロに減じて理想的な体調で結願出来たのは、正に大師のお陰と感謝しなければならない。

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