「四国の山並」
今回の遍路旅で一番印象に残ったのは、四国の山並だった。地質学的なことは分からないが、太平洋岸では山の斜面が急で、海に直接落ちているように見えたし、内陸に入ると山は正に波濤のように限りなく連なっている。種田山頭火の自由律俳句「分け入っても 分け入っても 青い山」は九州高千穂で詠んだものだそうだが、
久礼(くれ)から七子峠に歩いた時に、頭に浮かんだのはこの句だったし、内子(うちこ)から大宝寺に向かう時や、更に横峯寺を目指して上って行く時も同じ印象を受けた。
因みに山頭火は昭和14年に松山を起点に歩き遍路をし、各地で句作をしている。岩屋寺では「朝まいりは わたし一人の 銀杏散りしく」を詠み、句碑が立っている。その翌年に松山で客死した。

私の旅も後半になり、三角寺や雲辺寺など石鎚山の周囲に向かうと、山並の微妙な色調の重なりに讃仰の思いは増し、なにか詩想を纏めようと試みたが不毛の結果に終わった。
それにしても四国の山や海の自然の底深さは測り知れない感じがあり、地球温暖化などと騒ぐことすら、都会人間の傲慢な思い上がりとさえ思えた。しかし他方では、四国での公共土木工事、特に山の中腹を貫いて建設された高速有料道路と瀬戸内海を跨ぐ三本の大橋は自然を汚す冒涜行為に思えたが。


