「夕べの遍路道」
(1)出来るだけ宿には4時前に着こうと思うが、歩行距離が30キロを越えるルートでは、最後のペースダウンもあり晩秋の日は傾いてしまう。10月28日、37番・岩本寺を出て、四万十町、黒潮町と歩く。黒潮町に宿を予約してあるが、町に入ったと思ってから一向に宿に着かない。町村合併の結果、この町は30キロに亘って伸びている。目的地に着いたと思ってから、更に長い時間歩かされると心理的にヘトヘトになる。海岸を歩くこと更に8キロ、肉刺(まめ)が痛くて景色を楽しんでいる余裕がない。夕日を受けて黒潮が輝いていた。

(2)11月2日、42番・佛木寺(ぶつもくじ)を出たのは正午だったが急峻な葉長峠(はながとうげ)を越えてから43番・明石寺(めいせきじ)までは平坦だが長い距離、しかももう着く筈と思った所で曲がり角を間違え暫くそのまま進んだので、明石寺を打ち終わったら日暮れ近かった。地図上では寺から宿までは近いので多寡を括って歩き出したが、実際は標高410mの峠越えであった。途中で日没となり、ゲンナリした頃、ジグザグに降りてゆく遍路道の曲がり角に地蔵尊の石像が苔むしていた。片側の崖は深く沈んで暗くなっているが、遠くの山頂はまだ輝いている。地藏様は疲れた遍路の心をやさしく包むような童顔で微笑んでいた。今夜の宿は、古い街道の面影を残す家並み(宇和町)の中にあった。


